日本における自然療法医学
日本科学振興財団理事
特筆すべき日本における自然療法として、民間ベースでは、玄米正食、西式健康法などがあり、医療機関では甲田療法、森下自然医学などがある。 玄米正食は、故・桜沢 如一氏(1893〜1966)によって始められた。石塚左玄氏の食養法で健康を回復したことから、石塚左玄の食養法と中国の陰陽論を統合発展させ、正食(マクロビオティックス)とする玄米菜食療法である。欧米では、“ジョージ・オオサワ”、“マクロビオティック”の言葉は広く世界に知れわたる。氏はまた、マクロビオティックとそのライフスタイルの普及のために、30カ国以上を訪れ、著書は3百冊を超える。 西式健康法は、故・西 勝造氏(1884〜1959)が、自らの体験に基づいて編み出した民間の健康療法。内外のあらゆる健康法を調べ、そして自ら試した。その数は362種類にものぼるといわれ、1927年に西式健康法として完成した総合的な治療体系をもっている。栄養、四肢、皮膚、精神を4大原則として、平床寝台、木枕、金魚運動、毛管運動、合掌合蹠運動、背腹運動の六大法則からなり、腸内浄化、柿茶、生水の飲用、朝食抜き少食療法などを特徴とする日本独自の自然療法の1つといえる。 甲田療法とは、故・甲田 光雄氏(1924〜2008、大阪大学医学部卒、医学博士)が、西式健康法、断食療法、生菜食健康法など自然医学の研究の傍ら、桜沢式食養など各種の民間療法を実践研究し、これらを応用するユニークな健康指導医として大阪府八尾市に開業。現代医学では難治とされる種々の疾患に対し多くの治験例を挙げている。甲田療法の中核をなすものは@.断食療法:食事を摂取しない期間をつくり、解毒・排毒をはかり、内臓の機能アップを図る A食事療法:内蔵及び血液の流れを良くする食事で排毒作用と免疫力を高める。B身体強化と矯正(体操による):身体の歪みの矯正と、身体機能を高めることで強健な身体をつくる。著書は『断食療法の科学』『生菜食健康法』『ガン予防への道』など多数。 森下自然医学とは森下敬一氏(1950年東京医科大学卒業、医学博士)が、血液生理学者として半世紀にわたる研究生活の中で、動物性タンパク質を極力取らず、穀物や野菜を多く取るなど、血液浄化を中心に置いた独自の「森下自然医学理論」(1960年)に基づいた食餌療法を提唱する。1977年、米国上院『マクガバン・レポート』によって疫学的に裏付けられた。1966年衆議院科学技術振興対策特別委員会「ガン問題」の学術参考人として「血液の浄化でガンが治る」証言。(ここで陳述した「肉食発ガン・穀菜食防ガン説」は1982年、『全米科学アカデミー勧告』でも立証された)。1970年、森下自然医学理論に基づく医院「お茶の水クリニック」(東京都・文京区)を設立。1975年頃より、コーカサス、中国パーマ、フンザ、南米ビルカバンバなど世界の長寿郷を現地調査する。著書に「ガンは恐くない」「自然医学の基礎」、「血球の起源」、「自然医食療法」、「末梢血液・夾雑物の解析ー特に『経絡造血現象』について」等、学問的な著作から分かり易い著作まで80数冊に及ぶ。 |